着物愛好会

着物好きな主婦が言いたい放題言うブログです。

2021年03月

今日は私のお気に入りの帯をご紹介します。

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こちらは、アンティークの帯です。表と裏を出して並べています。
柄が違いますが昼夜帯ではなく、左右で柄を変えて広巾で織った物を二つ折りにして縫い合わせた、丸帯です。
昭和初期頃によく出回った経済的な帯で、あちこちでほぼ同じものを見ます。華やかな方を花嫁さんがしめて、後に反対側を訪問着に締めたようです。

私は鳥の文様が大好きなので、この訪問着用の側を使いたいなと思い、アンティークのお店で購入しました。

長さは3.8m程度です。たまにこの長さの引き抜き帯がありますが、これは裏表で柄が違いますし逆さまにならないので、引き抜きにはできません。

ま、ふつうに一重太鼓にすれば長さは充分。

問題は、とにかく固くて重いことです。

このような古い丸帯を結ぶ時には、結び目を作らない方が締まります。

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私はいつも折りあげて仮紐をかけるやりかたです。

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ここから太鼓を作っていきます。
とにかく重くて下がりやすいので、引き締めたら左脇にクリップで固定。

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柄が繋がるように作らなきゃ…。バランスが難しいです。

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どうしても富士山も入れたかったので、ちょっと太鼓は大きめです。

帯締めを入れたら、仮紐は抜いてしまいます。

自分で着るときは垂れとの繋がりに気をつけなければいけませんね。

デザインは好きなんですが、こういう柄の置き方だと着付けに気を遣うのが難点ですね。

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昔の着物を引っ張り出してきて、「これ、まだ着られるかな…若すぎるかなあ…。」なんて、悩まれた経験のある方は多いと思います。

明らかに若い方向け、年配向けというものはありますが、結局は着る物。似合うかどうか次第なんですよね。
私は普段、ババ着物愛好家です。渋いわねーと良く言われますが、好みの問題ですし礼装でもない普段着は好きに着ることにしております。

そんな私がある時、思わぬところで茜色の若々しい紬に出会い、なぜだかどうしても着てみたいと思ってしまったのです。

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帯周りは地味にまとめましたが、それでもやはり気恥ずかしいような落ち着かない気持ちになり、ちょっと後悔。
娘に譲ろう…。

ま、普段着は自己満足の世界ですし、自分が着て楽しければ良いのです。
それが、礼装になると違ってきます。
礼装はほとんどの場面で、「誰かのために装う」ものだからです。自分が主役の時はおいといて、子供の入学式の付き添いや親族の結婚式など、この場面で自分は何を着るべきかを考えなくてはいけません。
自分の着たいものではなく、着るべきものを。

TPOに合うものを選ぶとき、年齢相応ということもまた大切になります。ピンク系統は若いかなとためらう方の声をよく聞きますが、ピンクは80代でも上品に着こなせます。黒以外は地色はあまり関係なく、やはり紋様の配置、大きさなどが全体の印象を決めます。(黒は一番強い色なので、注意が必用です。)

私の失敗談ですが、息子の中学校の卒業式に紺色の付け下げを着ました。裾の辺りに少しのぼかしと風景模様のある、年配向けの付け下げでした。
その時は、とにかく地味なのを選べばよいと思っていたんですね。
後になって写真を見返してみると、なんだか夜のお仕事の方のように見えてしまっていました。
年齢にそぐわない年配向けの付け下げを着ることで、かえって粋な印象になることがあります。

普段着は着たいものを。礼装着はTPOに合うものを。これからも楽しんで着たいと思います。

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リサイクルの着物を嫌う方からよく聞くのが、不衛生であるとか怨念がこもってそうだとかいうご意見。
私は子供の頃から古書好き(特に絶版本)のため、衛生面ではあまり気にならない方だし、古い着物は洗い屋さんに出せば良いと思っているし、そもそも状態の良い物でなければ購入はしません。
そういう着物愛好家は結構いると思っています。

でも、怨念がーと言われるとなかなか返す言葉が見つかりませんね。
着物や人形、宝石の類いは特にそんな話を聞きます。

着物においてはよく「振袖火事」のお話が挙げられますが、実際には作り話だったとも言われています。
本当のところはわかりませんが、今日は私が実際に経験した不思議な出来事を書きたいと思います。

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この着物は骨董フェアで出会った物。
そこそこの年代物かとは思われましたが、躾糸のついたままの未使用品で、汚れもにおいも一切ありませんでした。
白地でこの状態の良さ、大きめのサイズ、何より墨絵調のあっさりした柄が気に入って一目惚れで購入を決めました。

しっかりとした紬地の単衣です。購入してからしばらく眠らせていた6月、梅雨のせいか少し肌寒いな…という時にふと思い出して初おろしして出掛けました。

足早に用事をすませに行く道すがら、近所の小さな公園を横切る時に、ふと呼び止められるような気がしました。
ああ嬉しい、嬉しい。風が気持ち良い、太陽がまぶしい、嬉しい。

私は驚いて足を止めました。平日の日中、住宅街の公園にも道路にも人の姿はありません。あれ、と思った瞬間、その声が自分の内側から沸いてきて心まで支配されるような感覚に見舞われました。
その時にようやく、「あ、この着物の感情なんだ」と理解しました。
こんな爆発的な幸福感は、私の人生においては子供が生まれた日くらいしか経験したことがありません。

もしも、物が長い時を経て感情に似たもの、思考のようなものを持つことができるのであれば、それは持ち主の想いなどよりもずっと強いのではないでしょうか。
生きているうちはたくさんの物に執着したり興味をうしなったり、その想いは一定していません。私がこの世を去るときに想いを残すのは、家族以外にはないと思いますし、多くの方が同じではないでしょうか。
大切な人やペットに未練を残しても、その瞬間に着物を想う方があるでしょうか。

ちょっと自分でも信じられないようなスピリチュアル寄りの経験ですので、これまで誰にも話したことはありませんが、縁あってうちに来た着物たちは大切にしたいと改めて思った出来事です。

そしてこの着物は、どこへ着て行っても誉められるし、引っ張り出すだけで幸せを感じられる一枚になりました。
私の大切な大切な着物です。

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今日は着物生活を楽しむ人たちの間でよく囁かれる、着物警察と呼ばれる存在について書きます。

私個人は、話題にあがるほどのレベルの着物警察さんにお会いしたことはありません。そもそも自分の美意識を他人におしつけるなよ、と常々思っているので、何か言われても「じゃああなたはそう着ればいいんじゃないすか」としか思わないし、そんな生意気そうな人間には話しかけてこないのかもしれません。

着物警察と呼ばれる方は、かつて着付け教室で学ばれた「こう着るべき」にとらわれ続けているのではないかと思います。
もともと教室にわざわざ習いに行くような人は真面目なタイプが多いですし、教室のテキストを素直に実践されてきたのでしょう。
私も大手着付け教室の出身ですし今でも繋がりをもっています。

私が学んだ着付け団体は歴史が古く、成り立ちは戦後間もなくまで遡ります。
みんなが食いぶちを稼ぐのに必死になった時代に、この団体は「女性が一人でもお金を稼げるように」と誕生したらしいのです。

要するに、「着付け士を養成する」目的で創設されました。その後、着物離れが進み続けていった結果、「自分では着られない、コーディネートもわからない。」という方が増えたために、あちこちに存在するようになった着付け教室は自装コースなんかを作って間口を広げました。

現在の着付け教室の需要は、ほぼこの自装に集中していますが、本来は着付け士を養成する学校だったのです。

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教室のテキストには、カテゴリー別に「おはしょり何cm、半衿何cm、下前の裾何cm上げる」などの着付けの基準が載っています。
これは、「着付け士として他人に着せる時にお金を頂戴できる美しい着付けの基準」です。
自装においては、「着付けのプロとして見る人に信頼される着こなし」を基準にしています。
コーディネートなどの知識面では、「着付け講師、着物のプロとして他者にアドバイスできる知識」を学びます。

教室に通う生徒さんたちは、実際はそういう着付け士としての学びの中にいるということに気づかず、次第に生活に即したカジュアルな着方やコーディネートを受け入れられなくなっていきます。

でも着付け教室は決して、新しい斬新なコーディネートを否定するわけでも、シワだらけの雑な着付けを否定しているわけでもありません。
「着付け士として他者に着せる」「着付け士として美しい自装をする」ことを学んだだけであり、他人がどんな着こなしをしようが眉をしかめる必用がないのです。

教室を出てから着付け士として実際に仕事をしている人間の多くは、どんな着方であれ「着てくれるだけで嬉しい」と思うような着物好きが多いように思います。逆に教室を出てからごくたまにしか着物を着ない、という方が立派な着物警察さんに成長されているのではないでしょうか。

あなたの美の基準を他人に求めてはならない。

たくさんの方に着物を着る喜びを知ってもらうために、自省しなければいけないと思っています。

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今日は私の記憶に今も新しい、一枚の着物の話を書きます。

私は仕事で日々たくさんの振袖に触れます。重厚な年代物の持ち込み振袖もあれば、今時のインクジェット振袖も。安価な現代の振袖は染色技術の進化のおかげで柄付けも豪華な物も多く、「安っぽい」なんて馬鹿にはできないように思います。

だって、安いんですもん。20万程度で、ここまで華やかな物を作れるんだと感心します。

古いものには確かに、天然染料で染めたり手刺繍、手描き友禅など職人さんの高い技術が施されています。高価なのも当然で、今は「振袖フルセットで50万もした!」なんて驚く声も聞きますが、振袖のみでそれ以上の価格が当たり前だった時代の感覚は遠くなったのでしょう。

現代は振袖は成人式に一度着たきり、なんてことも多いのです。それならレンタルで、安くて見映えの良いものを、という流れになるのは当然ですよね。

私は今のインクジェットの振袖に悪い印象は持っていませんし、ママ振袖と呼ばれるバブル期前後の高級振袖も玉石混淆だと感じています。

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私の忘れられない振袖はこちら。お袖のアップですが、全体が同様の色柄です。

天然藍の濃淡のみで柄出しをした逸品です。
この振袖と出会ったのは、とある展示会でした。藍染の工房が制作した物です。お値段は、60万くらいだったと記憶しています。この展示会は織元や染め屋さんが直接販売に来ている催事だったため、同じものでもデパートで買えばもっともっと高額になるでしょう。

こちらを目にした時、圧倒的な存在感と深い藍の色味の美しさに、しばらく動くことができませんでした。刺繍も絞りもない、ただ藍の色だけの振袖なのに、こんなにも美しく力強い物が作れるんだと。

何年たっても、忘れられない藍染の振袖。お値段を聞いた時に「安い!」と思ってしまいましたが、私には買えません。いつかどなたかがお召しになる時に、見てみたい…着付けてみたい…なんて思っています。
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